印刷インキの環境配慮

印刷物の大気汚染・VOC対策について考えてみます。
印刷物の環境配慮というと一番に思いつくのが「紙」、次に「インキ」になるでしょうか。

紙は再生紙、森林認証紙、非木材紙など色々な環境配慮マークがありますが、インキについては、アメリカ国旗をモチーフにした「大豆油インキマーク」(ソイシール)が最も有名です。

紙は木材資源から出来ているため、「森林問題」に関連しているということはすぐに理解できます。一方、大豆油を使ったインキと環境との関係はよくわからないかもしれません。「植物」=「環境にいい」といった漠然としたイメージもあるものの、植物性、植物由来だからといって必ずしも環境にいいとはいえないことも明らかになってきました。

印刷物に表示されている説明文をみても「環境にやさしい大豆油インキ~」「生分解性に優れた~」「脱墨性に優れた」などとあり、いまいちピンときません。

大豆油インキについて、インキメーカー等ではさまざまなメリットを主張していますが、政府の環境物品の購入基準であるグリーン購入法基本方針や、印刷業界団体の定めた環境基準(オフセット印刷サービスグリーン基準)等では、インキの環境対策として、揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制に重点を置いています。

印刷インキには、顔料を分散し印刷物に転移・固着させるため溶剤成分が使われており、これが乾燥中にVOCとして揮発します。VOCとは、蒸発しやすく大気中で気体となる有機化合物の総称で、トルエン、キシレンなど、主なもので約200種類あります。光化学オキシダントやSPM(浮遊粒子状物質)など大気汚染原因物質の1つとされており、大気汚染防止法で排出規制が行われています。

VOCは色々な場面で排出されますが、中でも印刷のVOC排出量は、全VOC発生量の13%を占め、塗装に次ぐ2番目となっており、排出削減が強く求められています。

さて、話を大豆油インキに戻しますと、大豆油インキとは、インキ中に一定割合以上の大豆油を含むインキです。枚葉オフセットインキであれば、全重量の20%以上が基準です。輪転インキでは7%以上など、インキの種類によって異なりますが、いずれにせよインキ中に含まれる石油系溶剤の一部を植物油に置き換えたものといえ、石油系由来のVOC削減につながっています。

大豆油インキを使うことがなぜ環境配慮といえるのか?VOCを削減し、大気汚染に配慮しているということがご理解いただけるのではないでしょうか。印刷物を発注する際に大豆油インキなどVOC配慮型のインキを指定することで大気汚染防止に貢献できます。

ただ、大豆油インキはゴールではありません。石油系溶剤の全てを植物由来成分に置き換えた「ノンVOCインキ」というもの使われています。一般の印刷物ではまだまだ普及していませんが、環境報告書・CSRレポートでは、32%のシェアとなっており、年々に増加しています。すでに大豆油インキはオフセットインキ生産量の約75%を占めるまでに普及していますので、環境優位を主張するには、こうしたノンVOCインキ採用などのチャレンジが必要といえます。

大豆油インキ・ノンVOCインキ□ ノンVOCインキマークが表示された印刷物の一例

なお、インキの環境配慮には、その他にも化学物質対策や古紙リサイクル対応など色々な側面がありますのでご注意ください。


(2010年7月 1日)