古紙リサイクルの現状と課題
森林破壊が世界的な問題となり、森林産品の代表である紙製品にも、3R(リデュース・リユース・リサイクル)が求められています。
古紙リサイクルの現状(経済産業省「紙製造業に係る古紙利用率目標の改定について」より)は、板紙(ダンボール、ボール紙等)では92%と高い一方、紙では37%、中でも印刷用紙では27%となっています。
板紙では、これ以上の利用が困難です。古紙利用を推進するためには、紙から紙、印刷用紙から印刷用紙へ、グレードを落とさず、リサイクルを行うことが大きな課題となっています。こうした点は、古紙回収率70%に対し、利用率が60%という点にも表れています。異物等の混入のない、品質の高い古紙が求められています。
紙から紙へリサイクルするもの、紙から板紙へリサイクルするもの、古紙リサイクルしてはいけないものを、正しく分別し、資源を有効に再利用することが必要です。
企業や行政の発行する大量の印刷物は、様々な過程を経て、一般家庭、職場の個人によって、分別回収、廃棄されます。有効な資源を、ゴミとせず、適切に回収を行うためには、分別方法も含めた適切な古紙リサイクルの案内表示がなくてはなりません。
現状では、まだまだ多くの自治体や回収業者において、紙になる紙、板紙になる紙との分別回収体制が十分ではないことも事実です。
しかしながら、資源の循環活用を高いレベルで達成するためには、古紙リサイクル可能な印刷物を積極的に採用し、古紙リサイクルの案内表示を行うことが不可欠です。
エコ印刷研究会では、こうした観点から、「古紙再生適性マーク」を提唱します。「印刷物によみがえる印刷物」普及のため、ぜひご活用ください。
古紙再生適性マーク
紙の再生利用、特に印刷物から印刷物へのリサイクルを推進するため、ぜひ印刷物に「古紙再生適性マーク」および説明文を表示してください。下記の条件において、「古紙再生適性マーク」を使用することができます。
「古紙再生適性マーク(1スター)(2スター)」使用方法
マーク使用料は不要です。印刷物に使用する全ての資材を確認の上、下記使用届にご記入いただき、エコ印刷研究会事務局までファックス(043-307-3728)にてお送りください。
使用届 | PDFファイル (クリックすると別画面で開きます) |
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ファックス | 043-307-3728 |
メール送付先 | info@com-design.jp |
「古紙再生適性マーク(1スター)(2スター)」使用条件
- リサイクル適性ランクリスト「A」の資材のみを使用した印刷物(「2スター」の場合)
- リサイクル適性ランクリスト「A」および「B」の資材のみを使用した印刷物(「1スター」の場合)
※表紙や綴じ込みなど、印刷物を構成する一部でも上記以外を使用したものについては対象外 - マークと説明文をともに表示する(マークと説明文をできるだけ近くに表示してください)
(2スターの場合)「印刷用の紙にリサイクルできます 不要となった際は、古紙回収・リサイクルに出してください」
(1スターの場合)「板紙にリサイクルできます 不要となった際は、古紙回収・リサイクルに出してください」 - 印刷物の裏表紙、奥付など分かりやすい場所に表示する
- 森林資源保全の観点から、古紙パルプや森林認証パルプなど、できるだけ環境配慮型パルプ配合率の高い印刷用紙を使用する
- 古紙リサイクル推進の観点から、「1スター」の場合でも、古紙リサイクル適性ランク「B」はできるだけ使用しない
マークと説明文
(2スター) 「A」ランクのみ |
(1スター) 「A」「B」ランクのみ |
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マーク | ||
説明文 |
「印刷用の紙にリサイクルできます 不要となった際は、古紙回収・リサイクルに出してください」
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「板紙にリサイクルできます 不要となった際は、古紙回収・リサイクルに出してください」
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ダウン ロード |
(2010年2月16日) マークと一緒に表示する説明文の内容を一部変更いたしました。
印刷資材の管理方法
古紙再生適性マークは、リサイクル対応型資材のみで制作された印刷物に表示するものです。
印刷物の用途・目的に合わせ、古紙リサイクル適性にも配慮を行って、印刷物の仕様を決めます。そして、印刷会社等に、必ずリサイクル対応型の資材のみを使った製造を行うことを依頼します。仕様書等には表れない部分でもリサイクル対応型とそうでないものとがあるからです。
(例えばUVインキには、リサイクル対応型UVインキと一般のUVインキがあり、それぞれリサイクル適性ランクは「A」「B」と異なります)
具体的な銘柄などは「リサイクル対応型印刷物資材データベース」で、リサイクル対応型の資材を検索することができます。
さらに、印刷物発行者としての責任として、実際にどのような資材が使われたかを確認することで、マーク表示、リサイクル案内表示に対する担保とします。
資材の確認は、印刷会社等に、使用した資材と製造元・銘柄名等の一覧(資材確認票)を作成してもらい、それを受領することで行います。日本印刷産業連合会「リサイクル対応型印刷物のすすめ」に詳しく掲載されています。また、グリーン購入法では、2010年度から「資材確認票」の作成が義務付けられています。エコ印刷研究会提唱の古紙再生適性表示は、国、業界団体の表示原則に反映された同一の内容を、トレーサブル(追跡可能)なシンボルとしての価値を提供しています。
エコ印刷研究会では、古紙リサイクル適性の確認と合わせ、製造事業者の環境マネジメントシステム、環境ラベル表示等について一括して確認するための「エコ印刷証明書」を提案しています。ぜひご活用ください。
資料・補足説明
古紙リサイクル適性ランクリスト
社団法人日本印刷産業連合会による印刷物に使用される資材の古紙リサイクル適性をまとめたリスト。詳細はホームページを参照ください。
Aランク | 紙、板紙へのリサイクルにおいて阻害とはならないもの |
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コート紙、上質紙、オフセットインキ、ハイブリッドUVインキ、リサイクル対応型製本接着剤、ホッチキス、リサイクル対応型シールなど | |
Bランク | 紙へのリサイクルには阻害となるが、板紙へのリサイクルには阻害とはならないもの |
グラシン紙、UVインキ、 製本接着剤、製本用糸、ラミネート、シールなど | |
Cランク | 紙、板紙へのリサイクルにおいて阻害となるもの |
濃い色の色紙、ファンシーペーパー、クロス貼り、プラスチック、不織紙など | |
Dランク | 微量の混入でも除去することができないため、紙、板紙へのリサイクルが不可能になるもの |
昇華転写紙(アイロンプリント)、芳香紙、発泡インキ、芳香インキなど |
「紙」と「板紙」
一般に紙と総称しますが、紙は、「紙」と「板紙」に分類されます。
紙は雑誌やチラシ、コピー紙などのいわゆる普通の紙、板紙は、段ボールやボール紙など、主に包装材料、パッケージとして使用されるものです。
紙 | 紙・パルプ統計の分類で、印刷用などの用途に使われる品目:大きく新聞巻取紙、印刷情報用紙、包装用紙、衛生用紙、雑種紙に分類される |
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板紙 | 紙・パルプ統計の分類で、主に梱包・包装材料として使用される品目:大きく段ボール原紙、紙器用板紙、雑板紙に分類される |
紙製の印刷物でも、製本や表面加工の仕方、用紙の選び方によって、古紙リサイクルされた場合に、紙の原料となるのか、板紙になるのか違ってきます。古紙リサイクル工程で、使用された異物、不純物、染色が除去できず、再生紙に混じりこんでしまうためです。うまく取り除けるものは、紙として使えますが、そうでないものは板紙に、また少しでも入ってしまうと、そのロット全体が駄目になってしまう資材や加工もあります。
雑誌やパンフレットなどでは、表紙にフィルムを貼るラミネート加工を行うことがあります。ラミネート加工を行った印刷物は、古紙リサイクル適性ランクリスト「B」のため、紙ではなく、板紙になります。つまり、印刷物から印刷物への再生はできず、段ボール等にしかなりません。
その他、印刷用紙自体が古紙リサイクル阻害要因となる場合があります。ファンシーペーパー(色や柄のついた厚めの表紙用の紙)、濃い色の色紙は「C」です。紙・板紙どちらにも使えません。インディアペーパーと呼ばれる薄紙やグラシン紙なども「B」です。
印刷物によみがえる印刷物を制作するためには、古紙リサイクル適性ランク「A」の資材や加工のみを使う必要があるのです。
各種印刷物の環境基準との整合性
エコマーク No.120「紙製の印刷物」認定基準Version2.0 |
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『印刷物は、「古紙リサイクル適性印刷物資材」に該当しない加工資材を使用してはならない』となっており、「古紙リサイクル適性印刷物資材」には、「製本用針金、ホッチキス等、難細裂化EVA系ホットメルト、PUR系ホットメルト、水溶性のり、光沢コート(ニス引き、プレスコート)、リサイクル対応型シール粘着剤・剥離紙」が上げられています。 これらは古紙リサイクル適性ランクリスト「A」のものであり、「古紙再生適性マーク(2スター)」に該当します。 リサイクル案内の説明文については、「この印刷物は、環境に配慮された原材料を使用し、リサイクルを考慮して製作されています。不要となった際は、回収リサイクルに出しましょう」となっています。 |
日本印刷産業連合会「オフセット印刷サービス」グリーン基準 |
<水準-1>
<水準-2> ネガティブリスト方式と、ポジティブリスト方式との違いがありますが、<水準-1><水準-2>が、それぞれ「古紙再生適性マーク(2スター)」「古紙再生適性マーク(1スター)」に該当します。なお、古紙リサイクル案内の説明文については規定されていません。 |
紙リサイクルマーク
紙のリサイクルマークには、容器包装リサイクル法による「紙製容器包装識別マーク」があります。このマークは、容器・包装等を対象とすること。また、建材、燃料化(サーマルリサイクル)等を含むなど、古紙パルプへのリサイクルだけを目的としたマークであるとは言い切れないため、エコ印刷研究会では、別途古紙リサイクルを推進するためのマークが必要であると考えます。